コンパスの針の動き、安物とエリートで比べてみた|本気のターンテーブル検証

コンパスの針の動き、安物とエリートで比べてみた|本気のターンテーブル検証

公開日:2026年7月1日|著者:中田 博喜(KATANA Adventure Ltd. 代表)

コンパスは、針が命だ。

エリートコンパスと安物の差を定量的に示すのは難しい。友人のものや店頭で振ってみることはできるが、とくにオンラインショップで伝えるのはなおさらだ。そこで、エンジニアらしく比較障害のない検証動画を撮影した。思った以上に明確に差が見れて、おもしろかった。

用意したのは3つ。ひとつは、うちのスイッチコンパスに載せているKanPasのエリートカプセル。残りの2つは、AliExpressで買った数百円のサムコンパスだ。針の構造の理屈は「コンパスの選び方」に書いたので、この記事では実際の動きを見てもらう。

📸 同一ターンテーブルに3つのコンパスを固定。同じ条件で針の動きを比べる。

この記事の目次

  1. なぜ針の動きが大事なのか
  2. 比較したのはこの3つ
  3. 検証方法:同じターンテーブルで同時に回す
  4. 検証動画
  5. 結果:針はこう動いた

Chapter 01

なぜ針の動きが大事なのか

走りながらだと、針の速さが効いてくる。手は上下に揺れ、コンパスも一緒に揺れ続ける。その揺れが収まって針が北を指すまでの、コンマ何秒。この短い時間が、立ち止まらずに方位を読めるかどうかを分ける。針がいつまでもふらついていると、確認のたびに一瞬足が止まる。その積み重ねが、長いレースではじわじわ効いてくる。

▶ 次は —— 今回並べた3つのコンパスの紹介。


Chapter 02

比較したのはこの3つ

スイッチ うちのスイッチコンパスに載せているKanPasのエリートカプセル。針の裏に磁石が付いているタイプで、オリエンテーリングのトップ選手も使うクラス。
アリ①太針 AliExpressで買った、数百円のサムコンパス。針の裏に磁石が付いているタイプで、見た目はKanPasのエリートモデルと変わらない。
アリ②細針 同じくAliExpressの数百円サムコンパス。細い針で、針そのものが磁気を帯びているタイプ。細い針でも裏に磁石が付いているものもあるが、これは付いていない。

安い方をわざわざ2つ用意したのには理由がある。ひとくちに「安物」といっても、針の構造が違うのだ。片方(太針)は針の裏に磁石を貼り付けたもので、KanPasのエリートモデルと同じ構造。もう片方(細針)は針そのものに磁気を帯びさせたもの。この価格帯の違い、そして構造の違いが、動きにどう出るのかを見てみたかった。

3つのサムコンパスの針と裏面。エリートとアリ①太針は裏に磁石、アリ②細針は針そのものが磁気を帯びている

3つのコンパスの表と裏。太針の2つは裏に磁石、細針は針そのものが磁気を帯びている。

補足:スイッチコンパスに限った話ではない

今回はスイッチコンパスのカプセルで比べたが、針の動きそのものはKATANA Adventureで扱っている他のKanPasコンパス(MA-46-FS、MAGL-45-FS)も同じだ。カプセルが共通だから、スイッチでも通常のサムコンパスでも、針の挙動は変わらない。

▶ 次は —— どうやって公平に比べたか。


Chapter 03

検証方法:同じターンテーブルで同時に回す

公平に比べるには、3つをまったく同じ動きにさらすしかない。用意したのは、回る土台 —— ターンテーブルだ。その中心から同じ距離のところに、3つのコンパスを固定する。中心から等距離なら、回したときの速度も遠心力もどれも同じ。さらに、互いの磁力が干渉しない間隔を取った。隣のコンパスに引っ張られている、という疑いも消せる。

急停止 1周ぐるっと回してからピタッと止める。針がどれだけ持っていかれ、そこから北に戻るまでどれだけかかるか。時計回り・反時計回りで2回ずつ。
自然停止 高速回転から手を離し、自然に止まるまで。回転中に針が北を捉え続けられるか。こちらも時計回り・反時計回りで2回ずつ。

この一連を、3つ並べたまま同時に撮影した。同じ入力に対して、針がどう振る舞うか。編集無しで素直に比較した。

▶ 次は —— その様子を動画で。


Chapter 04

検証動画

📹 同一ターンテーブルでの針の動き比較。時計回り・反時計回りの急停止と自然停止を、それぞれ2回ずつノーカットで。

見るポイントは2つ。

急停止 止まった瞬間に、針がどこを向いているか。
自然停止 止まった瞬間ではなく、回っている最中の針 —— どれだけ回転に振り回されず、北を捉え続けているか。

Chapter 05

結果:針はこう動いた

まず前提として、回転方向に針が引っ張られること自体は、3つとも起きる。これは物理的に当たり前で、欠点でも何でもない。差が出るのは「どれだけ引っ張られるか」と「そこからどれだけ速く北に戻るか」だ。

1周回して急停止

スイッチ 持っていかれるのは30度ほど。しかもそこからの戻りが速い。ほぼ待たされる感覚がない。
アリ①太針 90度ちょっと持っていかれ、止まったあとにゆっくり北へ戻ってくる。
アリ②細針 90度ちょっとのときもあれば、180度以上、ときにはぐるっと1周してしまうことも。3つの中で一番振り回され、収束も一番遅い。

時計回りと反時計回りで2回ずつ試したが、どの回もだいたい同じ傾向だった。まぐれではない。

高速回転からの自然停止

ゆっくり止まる自然停止でも見比べてみた。ここで見るべきは、止まった瞬間ではなく回っている最中の針だ。

スイッチ 回転中も90度以上は持っていかれず、ずっと北を捉え続けている。
アリ①太針 回転中に針がぐるっと1周以上してしまい、北を捉えきれない。
アリ②細針 同じく回転に振り回され、テーブルと一緒に回っているような場面すらある。

AliExpressの2つは、一見ちゃんと北に収束したように見えるときもあるが、回転中の動きをよく見れば、追従できていないのは一目瞭然だった。


コンパスは奥が深い

誤解のないように書いておくと、数百円のコンパスがダメだと言いたいわけではない。方角をざっくり知りたいだけなら、それで十分に用は足りる。ただ、走りながら何度も方位を読む競技で使うなら、針が落ち着くまでの時間の差が、そのままタイムロスになる。落ち着く前の針を読んでミスにつながることもあるかもしれない。エリートコンパスの中でも速さ重視のものもあれば安定性重視のものもある。本当に、奥が深い。

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著者:中田 博喜(KATANA Adventure Ltd. 代表)
埼玉大学機械工学科卒業後、建設機械メーカーにてエンジニアとして16年間勤務(米国イリノイ州に3年駐在)。2023年に帰国、2024年に独立しKATANA Adventure Ltd.を創業。チーム「ふきのとう / KATANA Adventure」として国内外のアドベンチャーレースに参戦。ニセコエクスペディション2連覇(2024・2025)。2026年11月はARWSシリーズ「ADVENTURE @ MECHUKHA」(インド)、2027年4月はA1ワールドカップファイナル(マレーシア・ランカウイ)に挑戦予定。

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